ノトリイアス・ビー・エル・ジー『不明なアーティスト』を振り返る

先日、高円寺の円盤で行われた新間さんプレゼンツ「不明なアーティスト」がとても楽しかった。
初のソロでのライブだったわけだが、内容についてはあの場所にいた人だけが知っていれば良し!
今回ご一緒させていただいた池田若菜さんのライブはもちろん素敵でしたよ。内藤彩さんがサポートで参加。心の襞をそっと撫でるような木管楽器の響き、ずっと聴いていたいものですね。あの内容の音源を絶対作ってほしい。家でも聴きたい!
その後のトークも在りし日の部室を思い出すものでとても楽しかった。新間さんと、聞き手の柴崎さんは学生時代のサークルの先輩なのです。本当にあっという間に終わってしまったので、もっとやっていたかった。トータルで8時間ぐらいやりたかった。でもそんなことをしてしまったらお客さんとしてはたまったものではないだろう。
トーク中に若菜さんがレコメン系をレコメンドしたことから、「レコメン女子」というワードが生まれ、さらに「レコメン女子はモテない」という切ない結論に至って笑ってしまった。でも、レコメン周辺の、スラップ・ハッピーとかZNRとかアクサク・マブールとかけっこう乙女っぽいとこがあると思う。PCOと一緒に聴けるというか。まぁモテるかモテないかは置いておいて。「スラップ・ハッピーより断然アート・ベアーズのほうが好き!」って人がいたらそれはそれでかっこいい。
レコメンといえば、先日Crammed Discsのツイートで存在を知ったAquasergeというバンドがとても良かった。フランスのバンドで、読み方に自信がないが、カタカナ表記だと「アクワァセウジュ」といったところでしょうか。フランス語の発音について何も知らないのでそれっぽく読んでみただけです。もっと素直に「アクアセルジュ」のほうがきっとベター。
それで、彼らのアルバムがBandcampで配信されていたので早速購入してみた。A l’amitiéというアルバムと、Tout arriveという3曲入りのミニ・アルバム。Bandcampで初めて買い物したのだけど、さすがに「これこそがインターネットだ!」という頭の悪い感想を抱きましたね。だって「腹減った。飯でも食うかな」みたいな情報が跋扈しているのを目の当たりにすると「何じゃあ?」って思うじゃない。
それはさておき、彼らの音楽は、レコメン系というかチェンバー・ロック的な要素が強く、イタリアのピッキオ・ダル・ポッツォやアメリカのマフィンズの系譜に位置づけすることもできよう。思わずトン・ゼーを連想せずにはいられない、良い塩梅に褪色した極彩色の、粒子の粗い映像のようなムードもあったり、ミニ・アルバムに収録された曲ではトロ・イ・モアっぽいことやっていたりと、まさに文句のつけようがないタイプど真ん中の女性と出会ってしまいむしろ困惑してまうといった状態です。
ちなみに、中心メンバーの3人はそれぞれ、ステレオ・ラブ、テーム・インパラ、メロディーズ・エコー・チャンバーのサポートをしていたりするとのこと。後者二つの、ピッチフォークなどのメディアから評価されてそうなものについては、疎いのでどういうものなのかよくわかっていない。
他にもエイプリル・マーチとコラボしたアルバムもあるそうだ。後でダウンロードする予定。エイプリル・マーチといえば、タランティーノの「デス・プルーフ」のエンディング・テーマとしてもお馴染み、ゲンズブールのペンによるフランス・ギャルの「娘たちにかまわないで」のカバー。この曲はハネムーン・キラーズもカバーしている。これぞまさにフレンチ・コネクション。
Aquasergeは今年9月にCrammed DiscsからEPをリリースするそうだ。つい先日新曲のMVがアップされていたが、これがまた良くて良くて。チェンバー・ロック的な一面を保ちつつも、マルク・オランデルにリスペクトを捧げるトランスワールド感覚を携えたアヴァン・ポップっていうのですか。そう言ってしまうと途端に陳腐になってしまうけど。歌に切なさもあってとても良いですよ。EPではシャソールのカバーも収録されるとのことで、楽しみ。

ここで話を「不明なアーティスト」に戻したいと思います。
その日、トークの流れでこのブログについても言及していただいた。ブログのタイトルについて細かすぎて伝わりにくいところがあるようなので改めて説明したいと思う。
まずこのブログのタイトルは”Notoriious B.l.G.”です。”Notorious B.I.G.”ではないです。本物の”Notorious B.I.G.”とどこが違うのかというと、”Notorious”に”i”が足されているところと、大文字の”I”が小文字の”l”になっているところだ。”i”が一つ多いのは私が”torii”だから。”I”が”l”になっているのは”Blog”を略して”B.l.G.”としているから。読み方としては、「ノトリイアス・ビー・エル・ジー」が正解。わかりにくいダジャレでスミマセン…
ダジャレといえば、見りゃわかるんだけど、アイコンやこのブログのヘッダー画像もAutobahnのジャケと「鳥居と真っすぐな道」をかけたもので、「上手いね、こりゃどうも」と言わずにはいられないダジャレとなっております。もじりばかりやってますが、ええ。
再び「不明」の話に戻ります。
トーク中にかけた曲ですが、個人的に既出のものが多いので詳細は割愛します。キーワードとしては、「リズムボックス」「ブラコン」「パラダイス・ガラージ」「コンパス・ポイント・スタジオ」「アフロ・ファンク」ってとこでしょうか。改めて思ったのは「アップ・トゥ・デート」という尺度で自分の趣味をマッピングしても別におかしなところにはいないというか、むしろ真っ当も真っ当だということ。それにしては、何というか、こう、現実に対する手応えみたいなものが一切感じられず、なんだかなぁという想いをさらに強くした次第であります。でもそういうものに色気を出してうまくいったことなど今まで一度もなかったので、爽やかにネグレクトしていこうと思う。これでお互いさま。もはや両思いと言っても良いのではなかろうか。やるじゃん!ヒューヒュー!

 

Masamichi Torii