【密造盤】ミツメ「三角定規△」カバーについて

このブログを定期的に読んでいる人の数をグーグルアナリティクスなどを参照しつつざっと見積もると、多くて10人程度だと考えられる。これを妥当な数字だと思った。むしろ多いのかもしれない。
一時、「日本人はブログを書くのが好きだ」みたいなことを言う文化人っぽい人が多かったのだが、今は自分の周りでも頻繁にブログを書いている人はあまりいないように思われる。なんとなくまとまった文章を書いたりすることが野暮ったいというか年寄りじみているのではないかと不安になるのだが、そもそも自分には若者らしいポップなところがあまりないのだから、今更そんなことを気にしていても仕方がない。いっそのことブログ名を、オジさんの趣味のブログよろしく「のとりいあす備忘録」だとか「徒然のとりいあす日記」といった名前に潔く変更するのもひとつの手かもしれない。
そんなこともあり、今回は「のとりいあす備忘録」です。
三角定規△のカバーについて
みなさん、密造盤はお聴きになられましたか!密造盤って何?という方に説明すると、スカート主催企画「月光密造の夜」に出演するスカート、ミツメ、トリプルファイヤー、この3バンドが、各バンドの指定する曲をそれぞれカバーするという企画で作られた盤のことで、我々はミツメの”三角定規△”とスカートの”おばけのピアノ”をカバーしたのです。
Soundcloudや密造盤でお聴きになった方はわかると思うのだが、ミツメの”三角定規△”は直接的にイギリスのバンド、ザ・スミス風のアレンジでカバーしている。そういえば、どうしてスミス風のアレンジになったんだっけ?ということふと思ったので、少しずつ思い出していきたい。
[soundcloud url=”https://api.soundcloud.com/tracks/198069515″ params=”color=ff5500&auto_play=false&hide_related=false&show_comments=true&show_user=true&show_reposts=false” width=”100%” height=”166″ iframe=”true” /]
アレンジに手をつけた時点で、ファレル・ウィリアムスのHappy風にするというアイディアがあった。ルートの動きにその名残があるかと思う。そのルート音を元にコードをつけていったので、コード進行自体はあまりジョニー・マー的ではなく、むしろアルバート・アインシュタインが唱えた理論に近いものがある。もっといえば歌謡曲〜J-POPのクリシェそのものだ。このアレンジはどことなく「いい日旅立ち」のような哀感を湛えているような気がしないこともない。
今ここでコンフェッションしておきたいことがある。コードをつけるときに難しいことは考えずパパッとやったせいで、メロディに対して結構無理のあるコード進行になってしまっているのだが、それに気づいたのが音源制作後だったのでもうどにもならなかった。具体的に説明すると、楽典的知識に乏しいので下手なことは言えないのだが、あるメジャーコードに対して、メロディが短3度でぶつかってしまっている箇所がある。これは果たして理論的に大丈夫なのだろうか。ジミヘンコード的な感じで問題ないのだろうか。喉に小骨が刺さったようで気持ちが悪い。吉田くんもさぞ歌い辛かったことだろう。その影響は川辺くんにも波及してしまい、沖縄のライブの前に元のメロディがわからなくなったと言って困っていた。どうもすみませんでした。
メロディのある曲を演奏してさらにボーカルが歌うという真っ当なことが自分たちにとっては異例のことなので、どう調理したもんかと色々思案していたときに、一月の企画「新年会」でハイスタの”My First Kiss”をカバーというかコピーしたことを思い出し、メロディを真っ当に歌うという線もありだと考えた。奇を衒ったアレンジで脱力気味に何かそれっぽいことをやっていれば「ああ、いかにもトリプルファイヤーらしいね」で済んでしまうし、それが一番楽な道なのかもしれないが、作品の質としてそれはどうなのという問題もあるし、それがスカート、ミツメと並ぶと来た日には。それは大変に恐ろしいことである。これはもう生半可なことでは済まないという危機感から夜も眠れず半泣きになってアレンジを考えたのであった。というのは半分ぐらい嘘。半泣きになりつつもアレンジを考えるのはとても楽しい作業だった。こんなに楽しいことが世の中にあるのかと吃驚するほど楽しかった。
「メロディ及びコード進行のある曲を演奏し、ボーカルが歌う」という我々にとっては異例なことを糸口にして、ついでに自分たちが普段やらないような要素を盛り込んで、バンドのあり方に幅が生まれたら儲け物じゃないかと個人的に考えてはいた。そんなときにポッとスミスが降りてきたのであった。
スミスというと高校のときに、『Queen Is Dead』と『Meat Is Murder』を聴いたぐらいで、さほど思い入れのあるバンドではなかった。ここに来てポッとスミスが出てきたのは様々な理由が考えられるのだが、ややこしくなりそうなのでここではさておくとする。端的に言ってしまえば、「アンチウェッティー」の裏返しである。バンドに入ってからずっとドライ志向でやってきて、それが今も空回りしている感がなきにもあらずなのだが、乾ききった心が無意識にウェットなものを求めていて、それがたまたまスミスだったのではないかと思われる。
そこからハマりにハマってユニオンやAmazonでアルバムを買い揃えた。最初に『Hatful Of Hollow』を聴いていればスミスに対する印象も変わっていたのかもしれないと感じた。高校生の頃にはわからなかったことだが、改めてスミスの音楽に接したときに、ジョニー・マーの50年代及び60年代のアメリカンポップス趣味に驚かされた。テクノロジーの進歩を謳歌する時代に昔のアメリカ音楽から影響を受けたスタイルでやるということは相当スノッブだったに違いない。最高だ。スノッブは勇気。スノッブは素直さの発露。スノッブは自分に正直であること。
だからどうしたといった類の話なのだが、三角定規△のカバーではどうしても12弦ギターが使いたかったのだが生憎持っていなかったので、代わりにナッシュビルチューニングを施したギターで同じフレーズをダビングした。ナッシュビルチューニングとは12弦ギターの副弦を張ったギターのチューニングのことだ。1、2弦はそのままにして、本来3〜6弦を張るところに1〜4弦を張り、それらの弦を通常よりも1オクターブ高くチューニングするとナッシュビルチューニングが完成する。その際、細い弦を張らないとテンションがかかるので、注意が必要である。自分がナッシュビルチューニングにしたときは、弦が切れそうで怖かったので、チューニングを一音下げて2カポで弾いた。
件のナッシュビルチューニングを施したギターで演奏した動画を以前セルフィしたので、拙い演奏で恐縮ではあるが、そちらを参考にされたし。バンジョーみたいな音だ。

ナッシュビルチューニングセルフィ

@mushitokaが投稿した動画 –


12弦ギターに近づけるべく、ラインで録音した通常のギターとナッシュビルチューニングのギターの2トラックをオーディオインターフェースで出力し、途中で安物コーラスペダルをかまし、VOXの小さい安物アンプで鳴らしたものを、マイクで拾うという工程を踏んで、1トラックにまとめた。普段まともに宅録などやったことないので、こういうことをするのは初めてだったが、これもまた楽しい作業であった。
こういう過程を経て、音のほうはジョニー・マーっぽくなったのだが、演奏したフレーズ自体は言うほどにはジョニー・マーっぽくはないと思う。ジョニー・マーのアルペジオはロカビリーのようなスタイルでシンコペートするところがあり、そこが彼と凡百のギタリストとの違いなのだろうが、三角定規△のギターはストレートな8分音符の羅列といった趣だ。やはり付け焼刃ではそれっぽいものにしかならない。アメリカ→イギリス→日本という道程を経るとどうしてもアメリカの味が薄くなってしまう。
イントロと間奏はもっとわかりやすくスミス風にしようと思い、”Headmaster Ritual”からフレーズを臆面もなく頂いて、しょっぱなのスネア連打のところをくどいぐらい繰り返した。このぐらいやって初めて丁度良いレベルになるのだろう。三角定規△のカバーを通じて、普段自分がやっていることがいかに地味かということを痛感した。やるときは大見得切ってやらなきゃだめだ。見出しになるような部分が一つでもないと何もやっていないのと一緒だと見なされると考えたほうが良いのかもしれない。もしくは自分でわかりやすいコピーをつけるという手もあるのだろうが、口癖が「うーん」の私にとってそれは大変難しいことであるように感じる。
今回の企画は3つのバンドによる所謂「スプリット盤」なので、アレンジが普段に比べると社会的であるように思える。いつもは「これもまぁきっとウケないだろうな。別にいいけど」という気持ちで作業に取り組むことが多い。今回は自分以外の誰かが聴くものであるという命題を優先させて作ったから、より社会的なアレンジとなった。社会性を意識すると今度はスベるのが怖くなる。三角定規△はすべってないか?
イントロと間奏についてもう少し言うと、”Headmaster Ritual”からの直接的なイタダキと言ったが、単音リフの部分は個人的には“What’d I Say”っぽいと思っていて、レイ・チャールズ→ビートルズ(”I Feel Fine”)→スミスという系譜を遡っていった形になっている。さらに、”What’d I Say”=ゴスペル+R&B/ラテン=”Happy”という円環構造にもなっている。こんなことは無理のあるこじつけでしかないのだが・・・
また、ここのフレーズはRich Kidsの”Ghosts Of Princes In Towers”のイントロを思い出させるところがある。Rich Kidsは元セックス・ピストルズのグレン・マトロックのバンドで、ボーカルは後にウルトラヴォックスに加入するミッジ・ユーロが担当している。”Ghosts Of Princes In Towers”は一年に一回ぐらい聴きたくなる名曲。アレンジが過剰なので、一年に一回ぐらいで良い。お腹いっぱいの名曲。
三角定規△のカバーを経て、キラキラした音が忘れられなくなった私は、今とても12弦ギターが欲しくなっている。マック・デマルコのバンドのギタリストが使っているダンエレクトロの12弦ギターがお手ごろ価格で良いのではないかと思う。それってトリプルファイヤーでも使うの?合う?という声も聴こえてくるが、デヴィッド・バーンだって12弦ギター使ってるよ!だからたぶん大丈夫だよ!
ところで、ライブ会場限定販売だった密造盤がお店でも買えるようになったとのこと。取扱店舗はタワーレコード近鉄パッセ店・名古屋パルコ店、JETSET、ココナッツディスク吉祥寺・池袋店。JETSETとココナッツディスクでは通販もあるとのこと。
V.A. / 密造盤 | Record CD Online Shop JET SET / レコード・CD通販ショップ ジェットセット
COCONUTSDISK WEBSTOR – V.A. / 密造盤 [NEW CD]
今回の記事は本当にオッさんの趣味のブログっぽい内容になってしまったのだが、こんなことを続けていたら、おそらくこのブログの読者はいなくなってしまうだろう。世は戦略と発信の時代である。いじけて趣味なんてぬるいことをやっていてはダメだ。そういうわけで、次回よりこのブログはSEO対策についてのTIPSをお届けするブログになります。メンター!

 

クリトリプルファイヤー

ついに一月以上このブログを更新をすることがなかった。週一ペースで更新していくという当初の計画は完全に頓挫してしまった。今回は久々に手頃なネタができたので更新しようと思った。
ネタというのは先日の企画「クリトリプルファイヤー」のBGMプレイリストのことで、例によってこれを発表しようと思う。

  1. The Isley Brothers – That Lady Part 1 & 2 – 3 + 3
  2. The Workshop – Luke’s Boutique – Workshop
  3. CAN – Vitamin C – Ege Bamyasi
  4. Snakefinger – The Model – Chewing Hides The Sound
  5. Véronique Vincent & Aksak Maboul – Réveillons-nous – Ex-Futur Album
  6. William Onyeabor – Good Name – World Psychedelic Classics 5: Who Is William Onyeabor?
  7. Azimuth – Melô Dos Dois Bicudos – Azymuth
  8. Captain Beefheart – Bat Chain Puller – Shiny Beast (Bat Chain Puller)
  9. Tom Zé – Complexo De Epico – Todos Os Olhos
  10. Marcos Valle – Mentira – Previsao Do Tempo
  11. Hirth Martinez – Djinji – Hirth From Earth
  12. Jingo – Fever – Afro Rock (Vol.1)
  13. Magic Circle Express – Magic Fever – Calypsoul 70: Caribbean Soul & Calypso Crossover 1969-1979
  14. Cameo – Rigor Mortis – The Best Of Cameo
  15. Gilberto Gil – O Canto Da Ema – Expresso 2222
  16. Moebius-Plank-Neumeier – All Repro – Zero Set
  17. Francis Bebey – Bissau – Psychedelic Sanza
  18. Gong – Love Is How Y Make It – Angel’s Egg
  19. Harry Nilsson – Me And My Arrow – The Point

このプレイリストは、左からアーティスト名、曲名、アルバム名という並びになっている。
今回は特にこれといったテーマが浮かばなかったのだが、結果的に大滝詠一の分母分子論でいうところの自分にとっての分母にあたるような曲が集まった。(自分で選んでいるのだから当たり前の話なのだが…)これらの影響が分子として表れているかどうかはわからない。
人のライブを観に行ったときや、誰かの企画にお呼ばれしたときなど、幕間にその人ないしその人たちの分母と考えられる曲が流れていると、なんとなく聴いていて良い気分になるので、そういうものを真似してやっているというところもちろんある。
これもまた例のごとく、Mixcloudにアップロードしたので、おひまなときに是非聴いていただけたら甚だ幸いです。いつものように余計な能書きを垂れてしまいましたが、再生したら音が流れてくるので、そちらに耳を傾けてみてください。

CliTripleFire by Notoriious on Mixcloud