最近観た映画(10/29付)

特に書きたいこともないし、発信したいこともないので、最近観た映画の感想でも書いていこうと思う。自分にとって映画というものは手に負えない感じがある。もはや好きかどうかもわからない。映画を観るのは好きだが、映画そのものが好きかどうかと問われたら自信をもって好きだと答えられない。そもそも好きかどうかが殊更重要な問題であると果たして言えるのだろうか。好きだから何だという問いは何事にも常につきまとう。例えば、自分が他の誰よりもクルアンビンのことを愛おしく感じているからといって先行予約の抽選に当選するというわけではない。そういう話なのか。
やはり映画の感想を考えるのは苦手だ。ストレス以外の何ものでもない。それでも書くか。書いていくのか。

『アンダー・ザ・シルバーレイク』(デヴィッド・ロバート・ミッチェル)

『イット・フォローズ』の「イット」の描写はフレッシュさを感じたしそれなりに期待していたがあまり楽しめなかった。評判が良いのでなんだか居心地の悪さを感じる。例えば『ビッグ・リボウスキ』、『インヒアレント・ヴァイス』、『ロング・グッドバイ』といった、そんなものが存在するのか不明だが、「陽光を浴びたノワールもの」に連なる要素があり、それは好物ではある。けれどもこの映画には乗れなかった。ひとつも嫌いなところがないのにあまり面白くもない。全然嫌いではないのだが。本当に。若干『シェイプ・オブ・ウォーター』や『ラ・ラ・ランド』的な趣味の良いオタクっぽさがあり、それが気になった。自分がどうあがいたところで所詮趣味の良いオタク止まりだとしても、ウェス・アンダーソン的な洗練を是としたい。主演がアンドリュー・ガーフィールドということで、スパイダーマンいじりのギャグが何個か用意されていたが誰も笑っていなかった。笑おう!

『ザ・プレデター』(シェーン・ブラック)

傑作。名作『ローガン』での軽い演技が忘れがたいボイド・ホルブルックが主演。癖の強い荒くれ者達が行きがかりで主人公に協力。決死隊を組んでプレデターと対決するというストーリーに興奮。こんなにさわやかで良いの?と不安になるほどのさわやかさをまとったSFアクション映画が2018年に作られたことに感動した。オリヴィア・マンの役どころも良かったし、律儀にサービスシーンまで用意されていた。

『クレイジー・リッチ!』(ジョン・チュウ)

傑作。ロマコメかくあるべし。すべてが上手く機能している映画。音楽に例えるならThe Emotionsの”Best of My Love”。たくさん笑ってたくさん泣いた。原題は”Crazy Rich Asians”だが、映画の中での日本のプレゼンスのなさ加減が気になった。

『クワイエット・プレイス』(ジョン・クラシンスキー)

リンプ・ビズキットのギタリスト、ウェス・ボーランドのすっぴんの状態を彷彿させる俳優ジョン・クラシンスキーが監督と主演を務める。主演は他にクラシンスキーの実の奥さんであるエミリー・ブラント。ウェルメイドなホラーで本当にハラハラさせる。シャルロッテ・ブルース・クリステンセンによる撮影もオールドスクールなホラーを再現していて良かった。ラストはジョン・カーペンター的な爽やかさがあり思わず快哉を叫びたくなった。よりにもよってこの映画を鑑賞するにあたりスマホをマナーモードにしていない客がおり、自分も電源をちゃんと切ったかどうか不安になってきたが確認しようにもゴソゴソ動いて音を立てたら迷惑だしどうしようとハラハラした。これがなかなかに良い体験で映画館で映画を観る良さはこういうところにある。

『デス・ウィッシュ』(イーライ・ロス)

イーライ・ロスによる「狼よさらば」リメイク。オリジナルのほうは昔テレ東で放送していたので観たが内容は忘れてしまった。リメイクのほうは現代の風俗を取り入れたギャグが光る。前半のテンポの良さは特筆すべきで、家族円満のシーンなんか特に気が利いていた。『フレンチ・コネクション』におけるニューヨークに通ずる殺伐としたシカゴの描き方も良し。こちらもラストはジョン・カーペンター的な爽やかさがあり思わず快哉を叫びたくなった。AC/DCの”Back In Black”に高揚。イーライ・ロスのうまさをしっかりと味わえる映画。

『クリミナル・タウン』(サーシャ・ガヴァシ)

地味な映画だが推したい。面白かった。ひんやりしてるが湿度はある、みたいな空気感がフィルムに閉じ込められていてそれが心地よかった。枕の裏の冷たさに通ずる心地よさ。思春期特有の感情の機微や親心の描き方については、『レディ・バード』よりもさりげない上に繊細だったと思う。話の筋は『ブルー・ベルベット』のような世界の暗部に青年が触れてしまうといったもの。そしてクロエ・グレース・モレッツの可憐さ。

『search/サーチ』(アニーシュ・チャガンティ)

父一人娘一人の家族。娘が突然失踪し、その行方を父が必死になって探すというドラマだが、この映画が変わっているのはすべてがPCないしスマホの画面上でのできごとになっていることだ。Macのスクリーンセーバーが映画館のスクリーンに映し出されることの可笑しさ。アイディアの勝利といえよう。ソーシャルメディアなど現代において一般的となった技術やサービスが物語を進める乗り物となる。映画はナマモノであるということを意識せざるを得ない。父が娘を探すというと『ハードコアの夜』を連想してしまうが、もはや笑うしかない悲惨さはないので、安心して観に行ってください。

 

「マシュマロ」反省会 / ほんとうに衝撃を受け、今でも聞き続けている生涯のお気に入りアルバムのジャケを10枚

やっほー!

久しぶり!みんな元気にしてた?久々にブログ書いてくね。

たくさんのマシュマロ、どうもありがとうございました

「マシュマロ」というネットのサービスがある。匿名の質問を受け付けて、それにTwitter上で答えるというものだ。ネガティブな質問、下品な質問、ただの悪口などを通さないフィルターが装備されているのが特徴といえよう。このマシュマロをフォローしている人が利用しているのを見ておもしろそうに感じつい魔が差して利用することにしたのが一月前。微妙なセンスの持ち主ほどこうした質問に答えるサービスを小馬鹿にしがちだから「では利用するのが正解だ」と短絡的に考えて開始したところもある。
質問が全然飛んでこなくて惨めな気持ちになるのではと不安に感じていたが、意外にもたくさんの質問が寄せられたのでほっとした。最終的にはフリスク二箱分の質問が未回答の状態になるほどであった。同じ人が複数質問している可能性もあるし、すべてが私の自作自演かもしれない。いや、自作自演なんて言ったらせっかく質問してくれた人に失礼だ。ごめんなさい。たくさんの質問、どうもありがとうございました。
質問ではなくエゴサーチの結果ではお目にかかれないような丁寧なメッセージを送ってくれる方もおり励みになった。こんなに水の澄んだインターネットがあって良いのかとやや不安になったが、本当に嬉しい限り。その距離の測り方は細野晴臣のベースのタイミングコントロールのように繊細でした。どうもありがとうございました。
「○○みたいな自意識をお持ちのように見えますが…」という枕から始まる質問をいただくことが度々あった。誰しも少なからず人からこう見られたいだとかこういう人間だとは思われたくないといった下心を持っているはず。けれども、他人からその下心がはっきりと見えるわけなどあるはずがない。たまに他人の自意識を見透かしてしまう人がいるが、見えないものを見てしまっているのでいわゆる「スピってる」状態と一緒だという自覚は持ったほうが良い。かつて「日本人の信条は察しと思いやり」と言った人物もいたが、「察し」と「下衆の勘繰り」は表裏一体であると心得よと言いたい。「親父の小言」風に言うならば。
一番感動したのは、質問に回答するのを止めますと宣言したところ質問がピタリと止んだところだ。これこそがファンクだと言いたい。JBの素早いジェスチャーとともにバンドが演奏をピタリと止めるがごときファンキーさ。これだけでもフォロワーからリムーブされながらも回答を続けた甲斐があったというものだ。
受付自体は締め切っていないので何かありましたらマシュマロを投げてみてください。ただし回答はしません。
鳥居真道にマシュマロを投げる | マシュマロ

「ほんとうに衝撃を受け、今でも聞き続けている生涯のお気に入りアルバムのジャケを10枚」

先日、といってももう3ヶ月も前の話だが、Twitter上でカシマさんから「ほんとうに衝撃を受け、今でも聞き続けている生涯のお気に入りアルバムのジャケを10枚」というバトンが回ってきたので取り組んだ。2000年頃からインターネットに慣れ親しんでいる人はご存知だと思うが、昔は「音楽好きへ100の質問」というようなバトンがあり、それが回ってきたら個人のテキストサイトで発表したりするという文化があった。そんなことを思い出してしみじみしてしまった。
「ほんとうに衝撃を受け~」はジャケの画像だけ投稿しても問題なさそうではあったが、TL上をさらっと流れていってしまいそうだったからコメントをつけることにした。音楽を聴いて「ほんとうに衝撃を受け」ることはもちろんあるにはある。けれども、それはやっぱり曲単位の話という感じがするし、アルバムという単位だとなかなか思いつかないので、最初の一枚を選ぶのに苦労した。そこで発想を変えて、「ほんとうに衝撃を受けた」という文言を「不可逆的な影響を自分に与えた」というふうに解釈して取り組むことにした。好きなアルバムならいくらでも挙げることができるが、その後の音楽観や趣味まで変えてしまうよう盤はそう出会えることはない。
律儀に10日間投稿し続けて先日、とはいってももう3ヶ月も前のことだが、ようやく終了した。もちろん密やかな趣味を他人に開陳することは自分にとっても恥ずかしいことだ。4日目ぐらいで「自分酔い」して気分が悪くなった。気恥ずかしさと気持ちの悪さから途中で放り出したくなりもしたが、「おれたちいくつになっても悪ガキ!」を合言葉に中高生的な感性に固執することで年々フレッシュさを失い淀みに嵌って腐りかけている2ちゃんねる的な態度を内面化したサブカルっぽい連中のようにホモソーシャル的な内輪ノリを支えている価値観をより強固にするために目配せしながらパフォーマンスとして他人を腐したり冷やかしたり貶したりするというような卑しい行いではなく、ポジティブなバイブスに溢れたことをせねばならない、自分の中の2ちゃんねる的感性を殺していかねばなるまいと感じたからきっちり10日間続けることにした。
選んだ10枚とコメントは以下の通り。