8/31
・前提
理想の演奏は、”1,2,3,4″とカウントを刻み体内メトロノームを基準にして音を配置していくというものです。現状の演奏を分析すると、まず音の配置ないしパターンを覚えて、それを音ゲーのように良きタイミングで演奏するという具合になっているようです。順番が逆です。「始めにリズムありき」ということを常に意識してください。
音価及びタイム感にこだわりすぎるということはありません。 リフ一発をひたすら繰り返すような音楽をやっている限り、リズムに関わることをおざなりにできません。音価コントロールやタイムコントロールこそが演奏の肝です。 ジェフ・ポーカロでさえ「俺のタイム感はマジでクソ」と言う世界です。コントロールおよびタッチに心血を注いでいきましょう。
音価コントロールといったミクロの視点と併せて、最初に説明したような拍をきっちり取って演奏するというマクロの視点も大切。シンコペーションやアクセントが拍のウラにきても、つられずにきっちり4拍子を取れるようにしましょう。
・課題
体内メトロノームを筋肉に染み込ませてください。これに関しては自転車の乗り方と同様、一度身につけたら死ぬまで失われることのない感覚です。演奏における基礎の基礎。料理における器。器がないとどうにもなりません。器のないラーメンを想像してみてください。どうやってそれを食べろというのですか。
体内メトロノームを養うには音楽に合わせて首を突き出して引っ込めるという往復運動をひたすら繰り返すのがいちばん手っ取り早いと思います。
体幹でリズムを取ることでリズムのオモテとウラの相互関係を体感的に理解していきましょう。まず〈リズムのオモテとウラ=筋肉の弛緩と収縮の繰り返し=反復運動〉と考えます。 ブランコ、振り子の動きと一緒です。一度動き出したら静止することはありません。さらに音を点で捉えないようにします。
なんとなく鼻歌を歌っているときに、どこからともなく4拍子のクリックが自然に聴こえてきて、頭も勝手に動いてしまうぐらいになるまで徹底的に取り組みましょう。 9/1
・課題
1.「体内クリック=1拍×4」を基準にして演奏する
ドラムでいうとカウントから実際の演奏に移行するときやブレイクに入ったときにテンポがよれがちです。それは体内クリックが絶対的な基準になっていないからではないでしょうか。
高校生の頃、DJの真似事をしているときに、色んな曲を”1,2,3,4″とカウントを取りながら聴いた時期がありました。そのときにリズムに対する感覚が鋭くなったという経験があります。
絶対的な基準となる体内クリックを開発するために、好きな音楽(踊れるようなものが良し)に合わせて、体を使い”1,2,3,4″とリズムを取ると良いです。全然しんどくないしやってみたら良いと思います。
2.リズムを静止した点で捉えない
音楽を聴きながらリズムに合わせてカウントをとるときに、リズムを静止した点で捉えないことが重要です。必ず首や腰など筋肉を動かしてリズムを取りましょう。リズムを筋肉の弛緩と収縮という一連の動きの中で捉えることが大事です。
3.自分もリズムにのって演奏する
「リズムを静止した点で捉えない」ことにも関わってきますが、いわゆる「音ゲー的な演奏」と「音楽的な演奏」の違いは、演奏する人が自らリズムにのっているかのっていないかの違いではないでしょうか。「俺がリズムを刻むんだ!」「俺がリズムを生み出すんだ!」という具合にガチガチにコントロールしようとするのではなく、流れるプールに身を預けるように、自らリズムの流れに乗っかって演奏すると良いです。演奏しつつ自分がお客さんになった気持ちでやってみてください。
4.リズムの組み立て方を考える
すでにカットされた一切れのピザを色んな所から適当に複数枚用意し、それを一つにまとめたところでまん丸のピザにはなりません。リズムに関しても同様に、小さい単位のフレーズをただなんとなく繰り返すだけでは踊りたくなるようなリズムは描けません。
まず一枚の丸いピザがあり、それを4等分すると考えてみてください。それをさらに2等分して8分割、再び2等分して16分割するというプロセスを踏んでいきましょう。3連系も同様です。同じ周期ないしスパンで音が鳴らされることが踊れるリズムにとって大事です。 9/2
すでに首や背筋などの体幹を使って4分でリズムを取ることの重要性を説きましたが、「なんで?」ということがイマイチ明確でなかったので、補足したいと思います。
前回のメモでも似たようなことを書きましたが、なぜ体幹でリズムを取るのかといえば、リズムを点で捉えないためです。体幹は文字どおり体の幹です。どっしり安定していますが、同時に小回りが利かないともいえます。しかし、この小回りが利かないことがリズムを点ではなく円運動の軌道として捉えることに適しているのではないかと思うのです。
なぜリズムを円運動の軌道として捉えるのかといえば、カクカクした硬い演奏ではなく柔らかい演奏にするためです。柔らかい演奏とはしなやかで躍動感があり踊りやすい演奏といえるでしょう。直線的な往復運動はエネルギーのロスが大きいです。適当な例といえるかどうか不明ですが、車の動きで例えてみます。
AとBという2つの地点があります。AとBの間を車を運転して往復するとします。往復するにあたり、前進とバックを駆使して往復するのと、AとBを直径として結んだ円の上を走行するのとでは、どちらが楽でスムーズでしょうか。
他にも理由はあります。一度ついてしまった癖は抜けにくいということと一緒ですが、脳ではなく体に染み込ませたほうがより忘れにくいというか体から抜けにくいので、体幹に染み込ませることが大事です。例えば声を出してカウントすることはすごく良いと思います。ただひとつ気がかりなのは声でカウントを取っているとシンコペーションなどに釣られて「ワンッアトゥーーウ~ウ・・スリッ・・・フォーーオ!」といった具合に間隔が崩れてしまいがちなことです(自分にそういう傾向があります)。そういう理由で、声を出すことは必ず体幹とセットにしてください。 9/29
演奏が走ってしまうのは気が急いているために休符に余裕がなくなり、ドミノ倒しのような演奏をしてしまうからでしょう。その対策として音を出したら出した分だけ絶対に物理的な反動があると考えみてください。バランスボールに座ってぴょんぴょんハネているような心づもりで演奏してみてはどうでしょう。反動は絶対に殺さないでください。むしろ反動を利用して次の音を出していくというイメージです。合理的な身体運用によって発せられた音にこそ心地よさが宿るものです。 10/7
オモテとウラの役割を感覚的に掴む。そのために・・・
・首でリズムを取ってみる
音楽 (4分の4拍子のもの)に合わせて「1 and 2 and 3 and 4 and…」とカウントしていきます。顎を突き出すのは拍のオモテです。顎を突き出すと言っても力(リキ)を込めて突き出すのではなくて、首の力を抜いてダランと前方に顎が落ちた状態にすると良いでしょう。顎を引っ込めるのはandの部分、つまり拍のウラです。このとき、うなじの下あたりにクッと力を入れ、顎を引っ込めます。顎を引っ込めたら今度は次の拍のオモテと顎を突き出すタイミングが合うように力を抜きます。要するに筋肉の弛緩と緊張あるいは伸展と収縮でリズムを作っていくという感覚です。ちなみにこの方法は七類誠一郎が書いた「黒人リズム感の秘密」という本の受け売りです。
大事なのは、「オモテが脱力/ウラが緊張」という役割を担っているということです。ウラで溜めた力をオモテで解放するという感じです。また、キレ=脱力、タメ=緊張ということも意識してみてください。あと、これをやるときに首だけを意識して背筋と腹筋を使わずに行うとたぶん首痛めます。背骨ごと動かしていくと良いです。
最初は力が入ってしまってスムーズにいかないと思いますが、やっているとそのうちコツがつかめてくるはずです。音楽に合わせて「1 and 2 and 3 and 4 and…」と声を出しながら首でリズムを取っていくと感覚がつかめると思います。ドラムの音を首に共鳴させる意識でやると尚良し。コツを掴んできたら動きを大きくしていくと円運動の中で点を捉える感覚が養われてくると思われます。
最初に感覚を掴むためにはBPM100以下の90年代東海岸ヒップホップの曲に合わせてやるのが良いでしょう。90年代東海岸ヒップホップのビートはウラ(=and)で鳴るHHがよく目立つので、わかりやすいかと思います。
が、その前に・・・・
ウラを取るシンプルな練習に取り組むほうがより即効性があると思われます。ウラが取れてないからなかなか4分が揃わないのでは…と思います。自分でやってみて思ったのは結構ウラを基準にして次に来るオモテのタイミングを読んでいるところがあるなぁ、ということです。というわけで、クリックを鳴らしてウラに手拍子を入れるという練習を小一時間ぐらいやったら効果があるのではないでしょうか。
ついでに、以下のようなことも頭の片隅に入れておいてください。
「の」の字を描くようにリズムを刻むべしという話があります。実際に自分が演奏する場面に限らず、音楽を聴く場合においても体を使って「の」を描くように聴いてみると良いでしょう。先日の首の動きでリズムを取るのと一緒です。自分が聴いていて気持ち良いと感じるのは同じ形の「の」が延々と続いていくような演奏です。つまり4分の刻みが、イーブンではないにしろ、一定の間隔を保ったまま1小節単位で繰り返される演奏です。
英語で”in the pocket”という表現がありますが、これは同じ形の「の」が描けているような状態をそう言うのではないかと思います。予想通りのタイミングで次の音が来るから「気持ち良いなぁ!」って感じるのではないでしょうか。校庭に「うんてい」っていう遊具がありますね。あの遊具の掴む部分の間隔がランダムだったらとっても気持ちが悪いはずです。一定の間隔でスイスイスイーっと行けるからこそ遊んでいて楽しいのだと思のですが、どうでしょう。 10/10
楽器を演奏する人に対して「裏拍を取れるようになることが大事」と良く言いますが、その真の重要さが沁みてきた昨今です。裏拍を取るというか、次の表拍への折り返し地点をコントロールできるようになることが大事だという気がします。
Until You Come Back To Me (That’s What I’m Gonna Do) – Aretha Franklin
Rock Steady – Aretha Franklin
Funky Nassau, Pts. 1 & 2 – The Beginning Of The End
Harlem River Drive – Bobbi Humphrey
Teasin’ – Cornell Dupree
Feel Like Makin’ Love – D’Angelo
Wicki Wacky – The Fatback Band
Jungle Boogie – Kool & The Gang
Feel Like Makin’ Love – Marlena Shaw
Runaway – The Salsoul Orchestra Feat. Loleatta Holloway
We Are Family – Sister Sledge
Peg – Steely Dan
I Got The News – Steely Dan
メトロノームで練習してばかりでは味気ないと思うので、練習用に裏拍のハイハットが目立つ曲を改めて集めてみました。これらの音源を聴きながら口ドラムでコピって感覚を覚えてしまうのが早いのではないでしょうか。
これはあくまで持論ですが、腕や足での練習を中心にしてしまうと腕や足のコントロールの精度が基準となってしまいそれ以上の正確さがなかなか掴めないと思われます。音を出すことに関しては手足よりも口のほうがおそらく器用です。カタカナっぽく「ドン・チッ・タン・チッ」と発声するのではなく、英語の子音だけを使って発音していくとアタックが強調されてベターかと思われます。タンギングの感覚も養われて一石二鳥ではありませんか。寝ながらでもできるし。
バスケのドリブルで例えると、ボールが床に当たって跳ね返る瞬間がオモテだとすれば、ウラはボールを手のひらに収めた後、運動エネルギーの向きが上から下に変える瞬間といえましょう。音楽をバスケの選手、自分の頭をボールだと思いこんで、思いっきりドリブルされ続け、その感覚をトラウマ並みに体に染み込ませてください。機械のように正確なリズムは本来的にとても気持ちの良いものだと思うので、気持ち良さを追求するつもりでやったら良いと思います。
かようにリズムというものは根本的に「寄せては返すもの」だと思い込んでください。力を加えたらその力を跳ね返すだけの弾力性をもった物体こそがリズムの正体です。あえて雑に言い切ってしまいましょう。
その弾力の折り返し地点である裏拍をいついかなる状況においても意識していなければなりません。ウラを意識しないで演奏することは息を止めて暮らすようなものだと思ってください。 まさに命取りです。心臓だってオモテとウラを刻んでいるわけで、どちらかが欠けたらそれはもう心臓停止です。 10/17
以下のリズムにおける基礎あるいは土台的な部分をなんとしてでも身につけなければいけません。
・リズムにはオモテとウラがある
・リズムの基本型は4分の4拍子
・リズムは点でなくて円で構成される 11/15
緊張するとやはり体が固くなって、弛緩と収縮、緊張と緩和のダイナミクスがなくなる気がします。グラビアアイドルが笑顔で砂浜を走っているのだけど、揺れるはずのところがまったく揺れてないというような違和感があります。
・拍問題について
それがロックであろうとソウルであろうとジャズであろうと、広義の「ポップス」と呼ばれる音楽を聴くと人は誰しも必ず拍を取って聴いてしまうと考えてください。塩を舐めたらしょっぱいと感じる、サウナに入ったら暑いと感じる、頬っぺたを叩かれたら痛いと感じるといった具合に、音楽を聴いたら誰もが拍を感じてしまうものなのです。これはもう大前提です。ポップスがそういう前提を元にデザインされていることは明らかです。嘘でも良いのでそのような意識をもって今一度音楽を聴いてみてください。
とにかく拍を意識することです。それは音楽に拍という補助線を引いてそこに描かれているものを明らかにしていく作業といえるかもしれません。例えば企業のロゴに黄金比がよく使われるというのは有名な話ですが、実際に黄金比のガイドラインを当てはめてそのことを明示するのに似たようなことだと思われます。
リズムはその人固有のものではなくて共有物です。自分独自の感覚と長年にわたって培われてきたリズムの歴史を戦わせて、それに勝利するなんてことはありえません。そんな気がしませんか。
前提を取りこぼしたまま取り組んでも空回りしてしまいがちです。リズムは他人のためにあるものだと考えてください。他人の耳を意識してみましょう。 12/01
・16ビートの感覚を覚える
とにもかくにも真似することから始めましょう。とりあえずシェウン・クティというフェラ・クティの息子の曲を聴いてみてください。モダンで聴きやすいアフロビートとなっております。
1/19
・オモテとウラの役割を認識するための補足
ダウンビート・アップビートという言葉があります。ダウンビートはいわゆるオモテのことです。これは有名な話ですが、指揮者の指揮棒をオモテで振り下ろすことに由来しているそうです。他にも強拍という言い方をすることもあります。強という字をアクセントという意味合いにおいて解釈すると話がこんがらがるのでそのように解釈しないでください。一方、アップビートはダウンビートの反対で、ウラのことを言います。日本語にすると弱拍です。今回はダウンビートとアップビートという言葉が実際の演奏に活きるように拡大解釈していきたいと思います。
以前も話したことがあると思いますが、緊張と緩和という対比に当てはめたときに、ダウンビートは緩和、アップビートは緊張となります。これは力の入れ具合についての話で
ダウンビート・アップビートというものを意識しながら手のひらを使って8分刻みで4拍子をカウントしていきたいと思います。よくある”1 and 2 and 3 and 4 and”というカウントです。
ダウンビートで文字通り腕を落とし、手のひらで太ももを叩いてみます。このとき気をつけるのは、ダウンビートは緩和であるので、力を抜かなければならないということです。ここでニュートンのリンゴを思い出してください。我々が生きているこの空間では引力が働いています。腕を上げた後、力を抜けば腕は重力に従って自然と下に落ちていきます。これは別に力の必要な動作ではありません。筋肉の状態を緊張から緩和に移すだけで良いことです。この要領で、手のひらで太ももを打ってみましょう。打つというよりは落とすという意識でやると良いでしょう。
反対にアップビートでは腕を振り上げるわけですから、重力に逆らって力を入れてやる必要があります。筋肉を緊張状態にするということです。
力むと演奏が硬くなるというようなことをここ最近話していますが、これはきっとそのことにも関連する話です。
これらのことに注意して再び、首でリズムを取る訓練に取り組んでみると良いでしょう。
まず首から力を抜いて顎をだらりと前方に突き出します。生きていて良いことなど何一つないとった様子のいかにもしょぼくれた学生といった感じのポーズです。これがオモテのときのポーズとなります。次に首に力を入れて顎を後方にひっこめます。監督に試合中のミスを説教されて体がカチカチになっている高校球児といった感じのポーズです。これがウラのときのポーズです。これをリズムに合わせて繰り返していきます。
何のために行うかといえば体幹で大きくリズムを取るためです。注意してほしいのは力の入れ具合及び抜き具合のピークをウラオモテのタイミングにきちんと合わせるということです。また必ずウラのポーズが始めてください。オモテのポーズから始めてもリズムの起点が生まれません。ただ力が抜けている状態に過ぎずこれは「動作」ではありません。ピークがないわけで起点になりません。一方ウラのポーズは力を入れる「動作」なので、力のピークというものがあり、それがリズムの起点となります。
首でリズムを取ることの良いことは自分の出した音を基準にしないということです。従来の「とりあえず音を出してそれを基準に適宜間を取って積み上げていく」ようなリズム感を払拭する可能性が感じられます。
この練習にはアレサの”Until You Come Back To Me”が適しているでしょう。なぜなら8分のウラでハットが鋭く鳴っているからです。これをガイドに取り組んでみてください。ガチガチにコントロールしようとするときっとうまくいかないでしょうから、音楽に体を預けるつもりでやってみてください。他人のライブを見ているつもりで。 1/29
JBはバンドのメンバーに”Give me the one!”とよく叫んでいたそうです。”The One”というのは1拍目のことです。”Sex Machine”を聴くとよくわかると思うんですが、1拍目のキックが他のキックよりも大きいですよね。これは私なりの解釈ですが、JBの音楽における1拍目はリズムの起点であり、同時にリズムの目標地点という気がします。次の1拍目を目掛けて2、3、4拍目を演奏していくといった感じです。言い換えれば1拍目で時計の針が一周するという考え方です。従来の目分量で拍を積み重ねていくという方法では1拍目は揃わないし、JBの音楽のようにシマリのあるループ感が出せないでしょう。
リズムを時計に置き換えて考えてみます。1時間が1小節だとすると、長針が1拍目で0分、2拍目で15分、3拍目で30分、4拍目で45分の目盛の上を通り過ぎていくようにリズムを刻まなくてはいけません。1時間を4等分する感覚が必要です。今までの感覚は、4等分という意識がないために、だいたい体感時間で15分ぐらいやったから2拍目にいくというような感じになっているのではないでしょうか。このような拍の取り方を実際の時間にたとえてみると2拍目から16分、33分、48分と続いていって、1小節が一周して1拍目に来た時に、本来長針が0分を指し示していなければいけないところが、5分前後を示しているといった印象があります。
なぜこのような考え方が大事かといえば、リズムはみんな共有物だからです。時計というのは皆の指標であって、ある誰かの個人のものではありません。リズムはみんなが踊るための指針にならなくてはなりません。簡単に言ってしまえば、リズム時計になってくださいということです。
ウラとオモテということに関しても補足しておきます。ウラというのはただのタイミングや場所を指したものではなく「拍の折り返し地点」であると考えてください。1拍を左右対称の山で表したときの頂点にくるのがウラです。左右対称の山とは二次関数のグラフみたいな形をした山のことです。現状は「だいたい8分音符一個分やりました。はい、ウラが来ました」といった感じになっているような気がします。拍が山になっておらず平面上に点をなんとなく落として拍のようなものを作っている感じです。つまり2拍目の位置を見越した上でウラが取れていないということです。
1拍という長さにおける始点と終点がない限り二等分はできないし山は左右対称にはなりません。次の拍の頭を目指して左右対称の山を越える感覚が大切です。山の頂点までいったら位置エネルギーを運動エネルギーに変えて斜面を重力に従ってただ滑っていくような感覚が重要です。
理想は振り子のリズムです。振り子が一番低い位置に来るのがオモテで、一番高い位置に来るときがウラです。やはり重力というものを意識すると良いでしょう。重力に従うのがオモテ、重力に反発するのがウラです。この緊張と緩和、オンとオフが音楽に推進力を与えていると思ってください。
話が煩雑になってきたのでまとめます。まず4分音符の長さ=1拍の長さをしっかりと認識することが大事です。そのためには1小節を4等分するという感覚も会得する必要があります。それには”On the One”を合言葉にするJBの音楽がもってこいです。
4拍子をきっちり取ることを意識しつつ、ウラとオモテの役割をしっかりと認識することも大事です。敢えてウラにオモテとは別の役割を持たせる理由は、オモテを際立たせるため、なんでしょうか。この辺は言葉にしづらいのですが、踊れる音楽はウラとオモテがある、という一点だけは間違いありません。しかし、この感覚は万人共通のものではないとは思います。
4分をきっちり取れるようになったら、その縮尺を4分の1に縮小するだけで16分が美しく刻めるようになるはずです。フラクタルとかコッホ曲線で画像検索するとそのイメージ図がいっぱい出てくるので、参考に検索してみると良いと思います。
「習うより慣れろ」というわけで、JBの”On The One”よろしく「1 and 2 and 3 and 4 and」がひとまとまりということを意識しつつ、例の頭で4分を取る練習をしてみてください。首の筋肉及び上半身の筋肉の収縮と伸展でウラとオモテを刻むことも大切です。自分の頭がバスケのボールになったと思ってJBの音楽にドリブルされてみてください。オモテで床に叩きつけられ、ウラでは手で叩かれるといった要領です。主体的に働きかけつつ音楽に自分を溶かすという客体的感覚も忘れないださい。あくまで相手とハイタッチして初めて音が鳴るという感覚が大事です。くれぐれも勝手に自分で手拍子を打たないでください。全音符、二分音符、四分音符、八分音符、十六分音符、それぞれの単位で周期が揃っていることが前提です。JBのバンドの演奏のブレなさを体感してください。 1/30
リズムを取る際に1拍目はもちろんのこと、1小節の中心であり折り返し地点となる3拍目を、次の1拍目を見越した上で、正しい位置で捉える意識が大事です。
次のことは頭の動きと曲のウラオモテをしっかりシンクロすることができたら自ずとわかると思うのですが、やはりファンクはオモテの「接地時間」が短いです。尚且つウラの「滞空時間」が長い。ロックはその逆というかほとんど接地したままで、アクセントないし音の強弱だけを推進力にしています。「の」の字でリズムを取るとわかりやすいかもしれません。例えばJBの「セックスマシーン」ではスネアの音が上に向かって飛び跳ねて聴こえるような感覚があります。
ピストンの部分がステディな「1 and 2 and 3 and 4 and」というカウントで、車輪が円運動となります。とりわけ海外の心地よいリズム感を会得している人たちはピストン運動を背骨ないしその周辺の体幹をシャフトにして円運動に変換しつつリズムを取っているのではないかと考えています。ピストンのみでリズムを刻んだ場合、それは点でしかなく一応リズムではあるものの推進力はありません。つまり踊れないということです。一方、車輪のついた円運動型のリズムは前に進んで行く動力を得たわけですから、これは踊れるリズムとなります。
これをどう演奏に活かすのかということはまだ言葉にできていませんが、足でカウントを取り、手で縦に円を描くと足で取っているカウントに躍動感が増すという気がなんとなくしています。なので、この感覚を保ったまま実際に演奏すれば自ずとその演奏にも躍動感が生まれるのではと考えました。
足で刻むウラとオモテのピストン運動を背骨ないしその周辺の体幹をシャフトにして頭の円運動に変換するという二段構えのリズム解釈が一番に理に適っているのではという説です。機関車の仕組みと踊りたくなるリズムの仕組みの違いは、リズムの場合は車輪もピストンの動きに作用を与えるということです。それと踊れるなリズムが描く円は、機関車の車輪のように綺麗な円というよりはラグビーボールのような楕円形をしていると思われます。ラグビーボールが坂道を転げ落ちている感じがします。
試しに頭の横あたりで手首を支点にして先述の軌道を描いてみると体感できるかと思われます。こちらも機関車のように、肩の上下運動をピストン、腕をシャフト、指先の円運動を車輪に見立ててやるとなお良いでしょう。円の回転は時計回りにしてやってみましょう。 2/5