ゆく鳥居くる鳥居(2018年営業報告)

Notoriious B.l.G.読者のみなさん、メリークリスマス!Torry Chistmasamichi!

昨年、一昨年と「ゆく鳥居くる鳥居」と題してその年の個人活動をひとつひとつ振り返る記事を書いた。例のごとく今年も書いていきたい。

一年の活動をまとめるのはわりと疲れるので今年はやめておこうかと思ったけれど、もはや自分のことは自分で丁寧に扱う以外にどうすることもできないからやはり取り組んでいくことにする。自分のことは自分で可愛がっていくほかない。まさに「期待は失望の母である」の精神。念のために補足しておくと、これは大瀧詠一が残したナイアガラ語録で最も有名なものだが、どうせ失望するはめになるから何かに期待するなという意味ではなく、他人に期待して失望するぐらいなら自分でやれというメッセージが込められている言葉だ。

話のついでにナルシシズムに関して思うところを申すと、他人の視線越しに自分にうっとりすることを望んで欲求不満を抱えるよりも、鏡を見て自分の目で自分を見つめてうっとりしたほうが断然良いと思っている。「非モテ」だの「非リア」だのお仕着せのくだらない概念とはおさらばして、ユーライア・ヒープの『対自核』よろしく自分と向き合えば良い。そして、愛でたら良い。それが最近の持論。これがなかなか難しいけどね。握手会でスルーされたこととか常に頭の片隅にあるもんな。ポスト・マローンが左右それぞれの目の下に”Always”、”Tired”と書かれたタトゥーを入れているけど、自分の場合は鏡を見る度に目の下に「握手会で」「スルーされた」と刻まれたタトゥーを幻視してしまう。いや、だからこそ自分で愛でろという話なのだが。

昨年は記事の冒頭でこんなことを書いた。

来年はもっと出世し、多くの人に認知され、一つ一つ振り返っていられないほど大量に仕事をこなし、その結果この企画が今年限りのものとなることを願う。ただ「期待は失望の母である」といったナイアガラ語録もあることだし他人に期待していてもしょうがない。自ら動いていかねばなるまい。邪魔するやつは上にスワイプして消すのがウチらのルールだよねって言うてます。こんにちは!

自ら積極的に動くこともあまりなかったし、現状として「一つ一つ振り返っていられないほど大量に仕事」をこなしているとは言い難い。鳥居も人の子だから忙しいのは嫌だけど、音楽のこととなれば別腹で、永遠に作業し続けることが可能だから本当はもっとたくさん仕事がしたい。けれども仕事というものは誰かから振られて初めて仕事の体をなす。依頼がないことにはどうしようもない。どこからか大量のオファーが舞い込んでこないものか。理想の生活は、ひたすら家に籠もって作業し、空いた時間で平日の昼間から映画を観に行き、ユニオンをすこし覗いて、何か美味しいものを食べて帰るというもの。そんな生活がしてみたい。来年は少しでも理想の生活に近づけたら良いのだが・・・良い感じのおうちに引っ越したいし、ハワイへ旅行に行きたい。ハワイへ行ってステーキやパンケーキが食べたい!

例年のごとくバンドの活動については振り返らない。『ボヘミアン・ラプソディ』のラストに感動し、涙したからこそ、活動中のバンドとして自ら物語風の何かを演出することは自粛したい。『ボヘミアン・ラプソディ』に何に感動するかといえば、フレディ・マーキュリーやメンバーたちが音楽に献身する姿の愚直さであろう。彼らは決して物語へ身を捧げていたわけではない。そこを履き違えてもっぱら活動における美談めいたものを吐き散らかした後に一体何が残るというのか。そんな具合に、大上段に構えてみたものの、自分が美談めいたものを書くとは思えないが。

なにはともあれ、2018年の仕事を振り返っていきたい。振り返るにあたって参考にしているのは、ウィキペディアのトリプルファイヤーのページだ。いつも編集してくださっている方にシャウトアウトを送りたい。本当にありがとうございます。

1/5 正月特別番組「More Than Liner Notes 私の1枚~世代を超えて~」(ラジオ)

新年一発目の仕事は、萩原健太さん、亀渕昭信さん、ピーター・バラカンさんがDJを務めるラジオ番組にゲスト出演という大仕事(収録は去年の暮れだったが)。身に余る光栄とはまさにこのこと。ゲストは他にGLIM SPANKYの松尾レミさん。影響を受けたアルバムを一枚選んで、レジェンドであるDJお三方と音楽談義するという内容。とってもとっても緊張した。放送を聞いたという方は「妙な緊張感が張り詰めていて良かったよ」と仰っていた。後日、放送を聞いたところ、松尾レミさんは堂々とお話しており、自分とは大違い。わたしは話すことがあまり得意ではないけれど、いつか「鳥ちゃんのとりいそぎご報告ッ!」というラジオ番組を持つのが夢だ。タイトルは再考の余地があるが・・・

後日、電子書籍版音楽雑誌「ERIS/エリス」第22号に放送内容が掲載された。申し込むとバックナンバーを読むことができます。未読の方は是非読んでみてください。

音楽雑誌「エリス」

2/6 トリプルファイヤー・リズムアナトミー vol.2 (トークイベント)

リズム・アナトミーが好評につき早速第二弾。ゲストは、新間功人さん(1983 / トクマルシューゴ etc)、 西田修大さん(吉田ヨウヘイgroup etc)、シマダボーイさん。こちらのイベントについてはすでに記事にしたのでそちらを参照されたし。

http://notoriious.wpblog.jp/?p=5477

2/17 Record Snore Day #5 (DJ)

小柳帝さん、ミツメのまおくん、ナカヤーンと始めたDJイベントが早いもので第5回目。ゲストは池田若菜さんと内藤彩さん。池田さんは、新間さんプレゼンツ「不明なアーティスト」でご一緒したときにレコメン女子であることが判明し、勝手にシンパシーを抱いていたし、内藤さんはかねてよりディープなリスナーだと存じ上げていた。現在彼女たちはThe Ratelというバンドを組んで活動されております。

3/10 HOPI presents “SUN” (DJ)

The Morningsがじゃんじゃん活動していた頃からよくお世話になっていたぽんたさんとじゅんやさんが現在取り組んでいるHOPIの企画でDJ。バレアリック、アフロ/コズミックを中心に選曲。DJの場合、ひとりで会場入りして、ひとりで準備して、ひとりで待機し、ひとりで帰ることになるのでやや不安に感じることもあるが、自分のペースで行動できるから気楽といえば気楽。普段あまり喋る機会のない人と話すタイミングもあったりして楽しい。

3/14 Music Voyage DJ ピーター・バラカン×鳥居真道 (DJ)

ピーター・バラカンさんとのB2Bの三回目!昨年に続いて今年もホワイトデーの開催となった。こちらも既に記事にしたので参照されたし、と書こうと思ったところ記事にしていなかった。当然書いているものだろうと思っていた。なんたる不覚。当日のセットリストは会場のCafe 104.5のHPで確認されたい。

Peter Barakan × Masamichi ToriiMusic Voyage : ピーター・バラカン × 鳥居真道 2018.3.14 wed. | cafe104.5(カフェイチマルヨンゴー)

5/25 RECORD SNORE DAY presents“PROJECT GEMINI”(DJ)

RSDの番外編として小柳帝さんとふたりで「PROJECT GEMINI」というイベント開催。ふたりとも双子座ということで、アメリカで60年代に行われた宇宙開発「ジェミニ計画」をもじってこのイベント名となった。ゴッドファーザーは小柳さん。洒落てて素敵なイベント名!RSDとは少し趣向を変えて予めテーマを決めておいて選曲し、コメントを付け加えるという内容にした。今回はふたりということもあり、小柳さんのレコード・ディグのディープさを改めて思い知り敬服した次第でございます。

6/25 邦ロックから遠く離れて(トークイベント)

リズム・アナトミーの流れで歌舞伎町でオープンしたRock Cafe Loftでアメリカヒットチャートについてあれこれ話すイベントを行うことになった。このイベントに関しては既に記事にしたのでそちらを参考にされたし。

http://notoriious.wpblog.jp/?p=6301

7/15 Record Snore Day #6(DJ)

年内二度目のRSD。今回のゲストは以前RSD鎌倉編でご協力いただいvivement dimanche店主である堀内隆志さんと、RSDのネット配信でご協力いただいた映像作家・デザイナーの関山雄太さん。

アフロ/コズミックやバレアリック的文脈で再評価されている安レコを中心に選曲。ほとんど3ケタで買ったレコードばかり。

7/30 邦ロックから遠く離れて vol.2(トークイベント)

「邦ロックから~」につき割愛。

9/3 邦ロックから遠く離れて vol.3 (トークイベント)

「邦ロックから~」につき割愛。

10/6 僕とジョルジュ 高円寺HIGH (サポート)

昨年の12月以来の僕とジョルジュのサポート。メンバーは佐久間裕太さん、厚海義朗さん、そして、姫乃たまさんと佐藤優介さん。今回もとっても楽しかった。最初と最後に長尺ジャムを行ったが、これがまた新鮮だった。サポートをやるとリッチな音色のギターが欲しくなる。ところで艶っぽい音ってどうやって出すんだろう。

10/12 僕とジョルジュ 西麻布SuperDeluxe (サポート )

一週間後、僕ジョルサポート再び。やはりサポートという立場でギターソロを弾く場合はきちんと矢面に立たなくてはいけないと思っている。キメッキメのギター・ソロを弾くことは屹立した男性器を公衆の面前に顕示し、それを自らの手でしごき倒すようなものと言う人がいてなんだか考え込んでしまったけれど、やはり弾くときは弾かなくてはいけない。The Only Onesの”Another Girl, Another Planet”のギターソロとか最高じゃない。元々そうしたギターソロばかりコピーしていたので、手練手管のスタジオミュージシャンっぽいギターソロは全然弾けない。自慢することではないけれど。

この日はトリプルファイヤーのライブとダブルヘッダーだったのでライブ終了とともに六本木から新代田へ移動。気が昂ぶっていたようで気がついたらバスで独り言をぶつぶつ言っていた。

10/10 邦ロックから遠く離れて vol.4 (トークイベント)

「邦ロックから~」につき割愛。

11/10 NEWTOWN2018「NEWTOWN屋上庭園」(DJ)

このイベントについては、既に記事にしたのでそちらを参照されたい。

http://notoriious.wpblog.jp/?p=6257

11/17 Record Snore Day #7 (DJ)

今年三度目のレコードスノアデイ。ゲストは岡田拓郎さん。岡田さんは、柴田聡子さんをトリプルファイヤーの企画にお招きした際にinFireのギタリストとして参加されており、そのときに話しかけてくれたおかげで、直接面識を得ることができた。その節はどうもありがとうございました!

今回も再び安レコ・バレアリック、安レコ・アフロ/コズミック路線。そもそもバレアリックとかアフロ/コズミック自体が底値をついた安レコを新たな価値観で評価するという側面を持っているはずだから、ことさら安レコを強調するのもおかしな話か。

11/20 明日のアーvol.4『観光』メインテーマ (楽曲提供)

ウチらの靖直吉田や張江さん、左右のふたりも出演する「明日のアー」を主宰する大北栄人さんからコントの中で使用する楽曲の制作依頼をいただいた。メインテーマになるとのことで、気合を入れて作業。

公演を観に行き、たくさん笑った。中でも印象に残ったのは四角い形をした一家が四角い家で繰り広げるコント。その家族が箱ゆえに物事が滑らかに進んでいかないのだが、そのことによって生じる気まずさが本当におかしかった

11/29 今月の25曲 | 2018年11月編 Selected by stttr、高橋アフィ、CH.0、鳥居真道、Lil Mofo(寄稿)

文章を寄稿することは、映画の試写に招待されることと並ぶ文化系ドリームのひとつである。文章を書くことはあまり苦にならないのでいくらでも書くことができる。だから寄稿でもなんでもしたいのだが依頼が来ない。その原因は一体なんなのか。単に存在を認知されていないからなのか。クオリティが低いからなのか。人としての魅力に欠けるからか。色々と思案していたところ連載企画が始まった。なんと愛読している音楽系ニュースサイトFNMNLからのご依頼。とってもとっても喜ばしいことだ。「今月の25曲」というテーマの連載で、5人の執筆陣がひそれぞれ5曲ずつ選んでコメントを寄せるというものだ。しかし、文章を書くとどうしても長くなってしまうんだよなあ。今後は改めたい。

11/30 おとといフライデー / 『東京』(楽曲提供)

昨年の1月頃に着手した提供曲が目出度くリリースされた。その提供曲とは小島みなみさんと紗倉まなさんからなるおとといフライデーの『東京』のことである。30歳のポップス初期衝動が込められた曲。サビに行くまでに展開が3つあるのも初、曲中で拍子が変わるのも初、Dメロ的な展開が2回あるのも初、サビで転調するのも初、3サビで転調するのも初、ギターソロで転調するのも初、ふたつめのDメロでハーフテンポになるのも初で、とにかく初物づくしの曲だ。

作詞は大橋裕之さん。トラック制作にあたり、鍵盤を佐藤優介さんに、ドラムを羽田正也さんにお願いした。作曲、編曲、ギターとベースの演奏はわたくし鳥居。小島さんと紗倉さんの声って本当にチャーミングだと思わない?

11/26 邦ロックから遠く離れて vol.5 (トークイベント)

「邦ロックから~」につき割愛。

12/20 ミュージック・マガジン 2019年1月号 「音楽評論家/ライター、ミュージシャンが選ぶ2018年のベスト・アルバム10枚」 (寄稿)

昨年に続いてミュージック・マガジンの年間ベスト企画に参加。こんなに光栄なことはない。音楽配信サービスにより、ますます新譜を聴くのが楽しくなった一年だったが、他の方の選んだベストを見ると全然追えていないことがわかる。来年もたくさん聴いていきたい。

今回はっきりしたことは、新譜を聴く際にどうしても個人史/音楽史ではなくて音楽史/個人史になってしまうということ。表現の新しさのようなものはわりとどうでも良く、自分にとって新鮮かどうかが問題となる。糸井重里の「ほしいものが、ほしいわ」というコピーのようなトートロジーになってしまうが、端的に言えば「好きなものが、好きだわ」ということでしかない。ただ、趣味に閉じるつもりはなく、これから何を好きになるかわからないという可能性を捨てることなく、開かれた趣味にしたいとは思う。うまいねどうも。

12/26 セキトオ・シゲオ / The word Ⅱ Remixed 
by 鳥居真道(トリプルファイヤー)(リミックス)

初めてのリミックス仕事。しかもそれがセキトオ・シゲオと来た日には。というわけで張り切って作業。この「ザ・ワード Ⅱ」のリミックスは『セキトオ・シゲオ スペシャル・サウンド・セレクション』という編集盤のために制作したもので、マック・デマルコの来日公演で前座をつとめたトリプルファイヤーのギタリストというわけで今回ご依頼いただいた次第である。どうしてマック・デマルコが出てくるの、と思った方がいらっしゃるかもしれないが、そうしたことも併せて、「なぜ今セキトオ・シゲオなのか」といった話はCDに収められたCHEE SHIMIZUさんによる解説を読むと理解が進むこと請け合いだから、絶対に読んだほうが良い。

「ザ・ワード」はⅡのほうが有名だけど、Ⅰのほうもコズミックな趣のあるチャーミングなジャズロックでオススメ。

以上、2018年の営業報告。FNMNLの連載がアップされたら追加する予定。来年1月に情報公開がとっても楽しみなものがひとつあると密かに予告しておきたい。トリプルファイヤーのライブ開きは1月14日(月・祝日)の新年会。是非おこしください。

心せわしい年の暮れ、何かと御多用とは存じますが、何卒お気をつけて年末をお過ごしください。

 

Masamichi Torii