どうしようもない恋の日記 Part1

ついていけない話題がある。それなら聞くけどオマエについていける話題がひとつでもあるのかと問われると自信を持ってこれですと言えるものも特にないのだけど、一方でやはりついていけない話題というものはあるわけで、ゲームの話。
一口にゲームと言っても色々ある。フルーツバスケット、椅子取りゲーム、ウィンクキラー、ババ抜き、大富豪、スピード、オセロ、人生ゲーム、コイン落とし、UFOキャッチャー、ツイスター、ジェンガなど、ゲームとされるものを挙げていけばキリがない。しかし、ゲームと言えば一般的にテレビゲームのことになる。「普段ゲームする? 」と尋ねられて「インディアン・ポーカーならよくやるよ」と答える人はそういないだろう。
テレビゲーム。世の母親たちが言う所のファミコンのことである。ファミコンならうちにもあったからよくプレイしたものだ。しかし、この年回りになっても頻繁に話題にあがるようなゲームソフトは熱心にプレイしてこなかった。それらの代表例を挙げるならFF、ドラクエ、パワプロ、ストⅡなどだろうか。FFに関していえば気を抜くとそれを「ファイファン」と言ってしまいそうで怖い所がある。ここに挙げたようなソフトに接する機会に恵まれなかったため、誰かがドラクエの呪文などを会話の中で引用したりしても「はは!」と言ってお茶を濁すのが精一杯だ。しかし「ドラクエとかやってないし」と言って変に気を使ってもらっても悪いので下手に主張する必要もないだろう。
これらのゲームをやらなかったことの理由は一人っ子であることが大きいのかもしれない。ゲームソフトの選択権は完全に私が握っていた。別に他人と同じゲームなんかプレイしてたまるかよというような偏屈な子供であったわけでない。ただ少しゲームソフトに対する目が利かなかったというだけの話だ。例えば、野球ゲームの定番といえばパワプロやファミスタが挙げられるが、私が選んだのはスクエアから出ていた「デジカルリーグ」というソフトであった。操作に関してはおそらく他の野球ゲームを踏襲したものであったと思われるが、選手の体調を示す顔色のアイコンがチョコボであったり野球場の広告板がFFになっていたりとゲーム内の意匠がスクエアに因んだものとなっているのがその特徴であった。スクエアのソフトに金を落としたのはこのときが初めてで、何もスクエアに恩義があってこのソフトを選んだわけではない。何せFFにすら触れていなかったのだ。しかしなぜこれを選んだのかは今では思い出せない。
こうした「ハズシ」が悲劇を生んだこともあった。それは小学校4年かその前後のこと。コロコロだったか小学○年生だったか小学館が出しているコミック雑誌に名探偵コナンのゲームボーイ用のソフトの広告が出ていた。それは2頭身にデフォルメされたコナンを俯瞰で操り、事件解決の鍵となるアイテムなどを探しながら事件を解決していくといったものだった。これが猛烈に欲しくなった。その当時コナンに対して特に思い入れはなかったのだが、ポケモンのような操作性の謎解きゲームだったことが購買意欲をそそったのだろう。これを誕生日プレゼントとして買ってもらうことにした。きちんと予約もした。
発売日当日、入手したてのそのソフトを胸を踊らせて早速プレイしてみた。プレイを進めていくうちにある疑念が頭をもたげていった。
「これひょっとしてつまらない?」
誕生日プレゼントに買ってもらったソフトを退屈だと言うなんて何事ぞという意見もあるだろうが、そんなことなら当時からちゃんと把握していた。だから私はほとんど泣きそうになりながらプレイしていたのだ。自分で選んだとは言えせっかく買ってもらったソフトがこれほどにつまんないだなんてこんな悲しいことがあるか。かといって義理人情でやり通せるほどのポテンシャルがこのソフトに秘められているとは到底思えない。本来嬉しいはずの誕生日プレゼントに対する絶望とそこから湧きだす罪悪感。ゲーム内で登場人物が次々と殺されていくのと相まって気持ちは暗くなる一方だ。本当に辛かった。
私は日をおいて親に相談をにした。コナンを売り、それを元手に別のゲームを買っても良いかという提案だった。良いよと言うので私は別のソフトを購入した。
そのソフトは、「グランダー武蔵RV」というゲームボーイ専用ソフトでプラスチック製のリール型アタッチメントを取り付けてプレイすることができる非常に画期的なものだった。
 

 

Masamichi Torii