24ビート入門

Triplet-16th-feel-1
「16分の3連符がある。24ビートという様なものは無い」なんてことを言った人がおります。
好きなグルーヴの一つに「ハネた16ビート」というものがある。英語で”16th note triplet feel”と表記したほうがわかりやすいかもしれない。
大きな揺れの中に細かくてシャープな揺れが内在する、腰から発生したリズムの波が体の先まで伝播して、そこから再び腰まで返ってくようなあのグルーヴですよ。
ところで、「グルーヴ」という単語は曰く言いがたい何かしらの魅力を言い表すときの「彼にはオーラがある」「彼女にはカリスマがある」といった表現と似た感じで「彼にはグルーヴがある」というような使い方をされているが、そういうものとは別に「グルーヴ」という単語にはリズムの「フォーム」乃至「フォルム」のような意味合いがあるものだと理解している。(スティーブ・ジョーダンのDVD「Groove Is Here」を見よ!)
「フォーム」「フォルム」といったものは料理でいうところの器にあたるものだ。経験から言って食事をするときに器がないと困ってしまうことは想像に難くない。例えば職人が握った寿司をカウンターに直接置いてきたらどんな気持ちになる?食べられないこともないとはいえ…あるいはトンチンカンな器に盛られた料理を想像してみよう。例えばアイスパフェ用の器によそわれた白米なんてどうだろう。かようにして料理には器が必要だしさらにそれぞれの料理に適した器を拵えることも重要だ。音楽にも全く同じことが言えるだろう。(だからドラマーにはカウントで器の輪郭線を描いてほしい。あれは点を4つ打てば良いというものじゃない)まあ実際にはオニギリとかサンドイッチといった器を必要としない料理があるように器を必要としない音楽もあるので十把一絡げ(じっぱひとからげ)には言えないのだが。
「ハネた16ビート」というものに対しては、漠然と「通常の16ビートが名人のフィーリングによって良い感じに気持ちよくなったもの」ぐらいに思っていたのだが、これを1小節を24分割(=1拍を6分割×4拍)するビートだと捉え直すことで認識が改まった。演奏する者の体内には1小節を24分割するグリッド乃至パルスが予め用意されており、それに沿って(あるいは敢えてズラして)演奏されているのだと。「見かけの上ではわからないがウェブページを形作るのは裏側に書かれたHTMLである」といった話に近いのかもしれない。
分割というアイディアはかなり重要だろう。最初に一切れのピザを複数枚作り、それを後からくっつけて丸いピザを作ろうと思っても歪な形になるのと同様に、行き当たりばったりおっかなびっくり一拍またはフレーズひとまとまりを横にくっつけていっても良い塩梅のグルーヴのフォルム乃至フォルムは描けないのではないか。
こういった思いから1小節を24分割するということを強調するために、「ハネた16ビート」という表現をやめて「24ビート」と呼んだらどうだろうということを思いついたのだが、たぶんそのような呼び方は誤りである可能性がかなり高そうなのでここに記すに留めておきたい。おそらく一般的に24分音符というものがないので、自ずと24ビートもないということになるのだろう。
さらに「ハネた16ビート」にはストレート寄りでそこはかとなくハネているものから、かっちりとしたシャッフルあるいはスイングまでの間に濃淡があり、全てが24分割できるわけではない。「タッカタッカタッカタッカ」の「ッ」の幅は狭いものから広いものまで様々だ。
この前、バンドの練習の参考音源としてメンバーに聴いてもらうため、「ハネた16ビート」もとい「24ビート」の曲をまとめてプレイリストを作成した。普段はこのように参考音源を送りつけるといったことはしないのだが、口でああだこうだ説明するより手っ取り早いかと思いそうしてみた。効果の程は未知数だがまとめてて面白かったから後はどう転んでも別に良いやという気持ちが全体の八割程度。アンサンブルの向上を期待する気持ちも八割程度。数が合わないのが不思議で仕方がない気持ちも八割程度。合わせて二十四割。
思い込みを押し付けることになったらまずいので、候補として挙げた曲が、本当にハネてるのか、どれくらいハネているのか、都度再生しながら検証し条件に適うものであればiTunesのプレイリストに放り込むという作業を行った。
検証方法は、テーブルをパーカッション代わりにして、右手の人差し指でオモテの16分を刻み、左手の人差し指でウラの16分を刻むというもの。左手のタイミングが16のイーブンで割ったときよりも後ろに来ていればハネているということになる。その際どこにタイミングを合わせるかといえば概ねドラムで、右手はハイハットに合わせ、左手はキックやスネアのゴーストノートを基準に考える。右手だけでやったほうがわかりやすい場合もあり。興が乗ったら1拍を6連符で刻むということをする。そうすると今まで聞き逃していたパーカッションの6連符フレーズが聞こえてきたり、ギターやベースがオカズで6連符のフレーズを弾いていることに気付いたりして、楽しい。書道を習うときに文字のバランスを見るために方眼紙に書かれた文字をお手本としてを使うことがあるが、あれに近いところがある。音源に合わせて6連で刻むことはお手本に罫線を引く作業といえよう。
検証する際に注意しなくてはいけないのは先入観に惑わされないことだ。バカの一つ覚えで全ての音楽が24ビートに聞こえてしまいがちなので、なるべく小さい音を鳴らして音源に合わすこと。音源に溶けるまでひたすらやりこむと脳から美味しい汁が分泌されること請け合い。
6連符を刻む際は、大木を押すイメージを浮かべて実践するとよりグルーヴのフォルムが体感できるかと思う。木の幹をオモテの8分で押すと、その反動で幹がウラの8分で返ってくる。枝は幹の揺れが伝播して6連符を刻みながらワサワサしている。これの繰り返し。さらに、自分の体幹を文字通り木の幹、指を枝に見立てて6連符を刻むとかなり良い感じになるかと思われます。
最近はロックロックしたタテノリで演奏される8ビート(休符が圧縮されていて聞いていると息苦しくなるような無酸素の8ビート。粋で軽快な有酸素8ビートは大好物)の曲でもハーフタイムでリズムを捉えれば16ビートになることに気づき(あくまで自分の中で)、さらに、誰にも気づかれないレベルでそこはかとなくハネてしまえばそれはもう「ハネた16ビート」の出来上がりで、何事にも創意工夫が大事であることを実感し、また、友達がカラオケで歌っていたゆらゆら帝国の歌詞を思い出しながら、少し目の位置で何にでも変われるし、特定の局面においてもなんらかの楽しみ方があるのだと改めて感じた次第である。
このへんで件のプレイリストを一曲一曲みていこう。送りつけたものとは内容が変わっているけど、そんなの誰がわかるのかって話だ。

  1. Automatic – 宇多田ヒカル – First Love
  2. カサブランカ・ダンディ – 沢田研二 – 人間万葉歌 阿久悠作詞集
  3. What’s Goin’ On – Donny Hathaway – Donny Hathaway Live
  4. 都会 – 大貫妙子 – Sunshower
  5. Lonely Town, Lonely Street – Bill Withers – Still Bill
  6. Freddie’s Dead – Curtis Mayfield – Superfly
  7. Too High – Stevie Wonder – Innervisions
  8. N.Y. State Of Mind – Nas – Illmatic
  9. Look-Ka Py Py – the Meters – Look-Ka Py Py
  10. Choo-Chooガタゴト – 細野晴臣 – Hosono House
  11. Up On Cripple Creek – The Band – The Band
  12. The Girl Is Mine – Michael Jackson – Thriller
  13. I Am The Walrus – The Beatles – Magical Mystery Tour
  14. あまく危険な香り – 山下達郎 – OPUS ~ALL TIME BEST 1975-2012~
  15. 卒業写真 – 荒井由実 – COBALT HOUR
  16. Let Me In – Benny Sings – Benny… At Home
  17. Sugah Daddy – D’Angelo & The Vanguard – Black Messiah
  18. The Blacker The Berry – Kendrick Lamar – To Pimp A Butterfly

※ページ下部にSpotifyのプレイリストあり。

Automatic – 宇多田ヒカル

一番有名で且つ一番エグいハネ方をしているこの曲から始めよう。ハイハットの6連符を聴けばわかる通り、このトラックは1小節を24分割するグリッド上に音が配置されている。これはニュージャックスイング(NJS)という80年代後半に流行したメインストリームのブラックミュージックで採用された手法で、その元祖はテディ・ライリーとされている。
宇多田ヒカルが世に出てきた当時は「和製R&B」ということで喧伝されていたけど、今にして思えば和製ポストNJS歌謡といったほうが正確ではないかと思う。
ともあれ、自分の中でこのグルーヴのフォルムがわりとベーシックなものとして(「つつみ込むように…」「let yourself go, let myself go」「丸の内サディスティック」そして水曜深夜時代の「笑う犬の生活」の思い出とともに)根強くあるということを改めて感じる17年目の”Automatic”であります。

カサブランカ・ダンディ – 沢田研二

「早すぎた和製ポストNJS歌謡!」なんて呼びたくなるこのサウンドよ。完全にフィクションでしかないが…
「カサブランカ・ダンディ」と比較してみると、「Automatic」という曲がいかに歌謡曲/ブラック・ミュージック(ブラック・ミュージック分の歌謡曲)のアップトゥデート版という形で美しく結実したものだったのかわかる。(”Automatic”エンディングの泣きのディストーションギターを聴こう!)。「カサブランカ・ダンディ」をリハモした上で打ち込みのトラックを作り、宇多田ヒカルがフェイクを交えて歌えばわりと素直に”Automatic”になるのではなかろうかと思い脳内でシミュレーションしたところそうでもなかった。
日本人って結構このリズム好きなんじゃないか、という気がしてくる。「ルビーの指環」の例もある。ところでジュリーの声って本当に素敵ですね。

What’s Goin’ On – Donny Hathaway

名盤の誉れ高きDonny Hathaway Liveの冒頭を飾るマーヴィン・ゲイのカバー。「ああ良い感じだわあ」と思って何も考えないでベースラインをコピーしていたけれど、改めて聴いてみるとこれもハネた16ビートだ。
ダニハサのウーリッツァーに導かれてバンドの演奏が入ってくるところで、ベーシストであるところのウィリー・ウィークス(NOTウィキリークス!)が繰り出すのは6連符のオカズ。若干甘めのハネが都会的で且つ五臓六腑が温まるような滋味深い名演。
Donny Hathaway – What’s Going On

都会 – 大貫妙子

都会という単語が出てきたので「都会」。グルーヴの下敷きは言うだけ野暮かもしれないが”What’s Goin’ On”だろう。70’sモータウンマナーというか、スティービー~シリータのセンですね。
ベースはご存知、細野晴臣御大。ドラムはクリス・パーカー(ベターデイズおよびスタッフ!)。
話は変わるが、UFO Clubでライブして打ち上げに参加した帰り、深夜2時過ぎに中野付近をトボトボ歩いていたら、バーからカラオケで「都会」を歌う浮かれた調子の混声合唱が聞こえてきたことがあった。休日の深夜というお誂え向きのシチュエーションで「都会」を歌って盛り上がるというセンスに対してコンセンサスが得られている男女のグループって一体どんなだ。二次会には参加せずに機材を背負って小一時間歩く我が身との対比に思わず涙。現生では縁がなかったということで、うちへ帰ろう、いっしょに。

Lonely Town, Lonely Street – Bill Withers

というわけでロンリータウンのロンリーストリートを歩く私です。
タイトルからの安易な連想に過ぎないのかもしれないが、殺伐としたストリートの非常に厳しい雰囲気を醸し出すのはこのリズム感覚に依るところも大きいのではなかろうか。甘くてスムースなハネがある一方で、ドスの効いたハネもある。かなりビターな味わい。90年代の東海岸ヒップホップで聴くことのできるドスの効いたハネはこの辺りのイメージが援用されている、というのはこじつけか。ドラムはお馴染みジェイムズ・ギャドソン。
Bill Withers ” Lonely Town, Lonely Street “

Freddie’s Dead – Curtis Mayfield

ドスの効いたハネシリーズ第二弾。この曲ははっきりと24分割されてますね。
この曲をTV番組で披露したときの映像がYouTubeに上がっているが、そこでカーティスが6連符のカッティングをしててめちゃくちゃ格好良い。
70年代前半のアメリカ音楽が好きなんだけど、その理由の一つにハネてるからというのがあると思う。演奏する者の体内にあって半ばブラックボックス化していた「1小節を24分割するグリッド」が音として前景化するのはこの時期であろう。同時にブラック・ミュージックのリズム・セクションにラテン・パーカッションが登場することも見逃せない。
Freddies Dead – Curtis Mayfield

Too High – Stevie Wonder

ドスの効いたハネシリーズ第三弾。どちらかというと緊張感に満ち満ちたコードのほうにドスが効いているか。”Lonely Town, Lonely Street”、”Freddie’s Dead”、”Too High”はどれも1972年から1973年にかけて発表された曲。ドラムはスティービーが叩いているとのこと。というかコーラス以外全部スティービー。スティービーのハネた16ビートといえば”Sir Duke”のが一般的かもしれない。あと”Superstition”とか。
Stevie Wonder – Too High

N.Y. State Of Mind – Nas

名盤の誉れ高きIllmaticのプレリュード”The Genesis”が開けて始まりますのがDJプレミア製の”N.Y. State Of Mind”。ナズのラップはハネたりハネなかったり。超然とした態度がめちゃめちゃクール。
Illmaticは全編どのトラックにおいてもドスの効いたハネたキックが聴くことができる。ラップのトラックは基本的にハイハットの刻みが8分だ。隙間が多いほうがリズム的な遊びがしやすいのだと思われる。また、ありものの素材をレイヤー状に重ねて作ったトラックは複数のグリッドが内包されているため、聴いたときの印象として陰影のようなものをもたらす。だから、NJSのようにクオンタイズされたトラックと比べるとヒップホップにはアダルトな趣がある。同時にそれはある種のたどたどしさのようなものでもあり、その質感こそがヒップホップをヒップホップたらしてめているのではないかと思う。
プレミアのビートは、ラージ・プロフェッサー、ピート・ロック、Q-Tipらに比べるとハネ方が一番エグい。ファンの「クオンタイズは使ってますか?」という質問に対してプレミアは「使うわけねぇだろ!」と答えていた。
Nas NY State of Mind

Look-Ka Py Py – the Meters

ミーターズのハネ方は「ドスの効いたと」いうよりは、威勢の良いハネ方で、さしずめイキの良い魚と言ったところでしょうか。特にレオ・ノセンテリのギターはピチャピチャしてて魚っぽい。港町ニューオーリンズからの安直な連想か。この曲はガチガチのハネというよりニューオーリンズ流のバウンス感覚といったほうが良いかも。古めかしいスイング感覚が根付いているというイメージです。
The Meters-Look Ka Py Py.wmv

Choo-Chooガタゴト – 細野晴臣

遠征のときのテーマ曲(特に2番)。基本的に車移動だから厳密にはそぐわないのだが。
リトル・フィートをお手本にしたという話だが、ハネ方はミーターズばり。細野リズム史的には「あしたてんきになあれ」→「相合傘」→「Choo-Chooガタゴト」という系譜を辿ることができよう。ハネ方は段々とエグくなっていく。(ライブ!! はっぴいえんどの「はいからはくち」も含まれるか)
ところで、Hosono Houseのときの林立夫って結構ワイルドでポール・ハンフリーみたいじゃないですか。

Up On Cripple Creek – The Band

「下は大火事、上は大水。これなーんだ?」というなぞなぞがある。では「下はハネてる、上はイーブン。これなーんだ?」答えはザ・バンドの”Up On Cripple Creek”。みんなせーのでハネなきゃいけないっていう法はない。めちゃくちゃファンキーじゃありませんか。この曲のように個々人によってリズムの捉え方に濃淡のあるアンサンブルは何となくアメリカ的だと感じる。そしてそれはある種のとっつきにくさでもあるだろう。良薬は口に苦し、というとちょっと違うかもしれないが、ザ・バンドの音楽にはコクがある。そのリズムにも。
Up On Cripple Creek – The Band (The Band 5 of 10)

The Girl Is Mine – Michael Jackson

feat.ポール・マッカートニー!甘い!甘すぎる!軽く胃もたれしそうなこの曲はソフト&スイートで都会のレイドバックといった趣。ついついハード・オフの店内BGMを思い出してしまい申し訳なく思う。
ドラムはジェフ・ポーカロ。ベースはブラザース・ジョンソンのルイス・ジョンソン。時折入る16分の3連がニクい。
こういうサウンドにドゥーワップ調の低音コーラスをもってくるのがいかにもポールの味といった感じ。クインシーの指示かもしれないが。マイケルの歌声はマジでイノセント。
この曲を本歌取りしたであろうモニカとブランディという若きディーヴァが一人の男を取り合う“The Boy Is Mine”というビタースイートな歌もあります。
The Girl Is Mine – Michael Jackson & Paul McCartney

I Am The Walrus – The Beatles

リンゴのドラムってヒップホップみたいに聴こえるときがありませんか。90年代の東海岸ヒップホップのようにはキックがシンコペートしていないのだが、なぜだかヒップホップ的なハネが感じられる。オカズは例にもれずハネ気味。スネアの次にくるハイハットのタイミングが結構キモな気がする。
“Don’t you think the joker laughs at you?”という歌詞の後の”Ho ho ho! He he he! Ha ha ha!”という不穏な合いの手は3連符ですね。
“I Am The Walrus”以外にも”Let It Be”など結構気持ちの良いハネ方をしているように感じる。70年代前半のレイドバックしたファンキーさの萌芽がこの頃があったんでしょうね。
リンゴの叩くストレートな8ビートは聴いててとても気持ち良いけど、シャッフルの名手でもあると思っていて、端正でスマートなシャッフルを聴いていると文字通り心が弾むので大好き。”Old Brown Shoe”など絶品。ブルースというよりカントリー仕込みのシャッフルといった趣がある。
The Beatles – I Am The Walrus (HQ)

あまく危険な香り – 山下達郎

「ヤマタツリズム」という呼称(NOTヤマギシズム!)ももはや一般的とも言えるこのパターンですが、ご本人はシカゴソウルの影響を受けていると仰っております。パーカッションが6連符フレーズ叩くのを聴いて、改めてこのパターンのハネ具合を確認。(我々は「おばけのピアノ」のカバーでイタダキました。しかし、ハネ問題を曖昧にしたまま録音してしまった。嗚呼やり直したい。)

卒業写真 – 荒井由実

この朧げで繊細なシャッフルのリズムを「キャラメル・シャッフル」と名付けたい。そして、涙まみれでしょっぱすぎ!な塩分高めで食えないバラードのリズムを「キャラメル・シャッフル」に改変し微かな甘みを与えたい。そんな魔法が使えたら良いな!

Let Me In – Benny Sings

オランダのブルー・アイド・ソウル歌手ベニー・シングスによる名曲。ハネた16ビートはソウル風味のポップスの常套句でもある。パーカッションの「ポッコポッコ」というシャッフルのフレーズが効いている。ベニー・シングスのハンプティダンプティのような愛くるしい顔もポイント高し。
サックス奏者に熱っぽいソロを吹かせないで「シティ」を騙ることなかれ。メイヤー・ホーソーンより断然ベニー・シングス派!
Benny Sings – Let Me In (videoclip)

Sugah Daddy – D’Angelo & The Vanguard

ビル・ウィザーズのところで出てきたジェイムズ・ギャドソンがキックと手で膝を叩く音で参加しています。なんて贅沢な使い方なんだろう。
前作から引き続きキックより先に発音することを禁じられているかのようなタイミングでベースを弾くのはお馴染みピノ・パラディーノ。
ディアンジェロたちは単純な24分割とは別のディメンションにいますね。
D’Angelo and The Vanguard – Sugah Daddy

The Blacker The Berry – Kendrick Lamar

発表したそばから名盤の誉れ高きTo Pimp A Butterflyからの一曲。トラックのキックは若干ハネている、というより揺れている程度。しかしケンドリック・ラマーのラップが6連符という変わり種。でもこれガッチガチの24分割というよりは、16分割と24分割を並走させて行ったり来たりしている感じもあり。空間を伸縮させる感覚というかね。そういえばジミヘンのソロも結構16分割と24分割の間を行ったり来たりしてますね。
前作good kid, m.A.A.d city収録の“Swimming Pools (Drank)”ではセカンド・ヴァースで6連、エイサップ・ロッキーのLong. Live. ASAP収録の”1 Train”では2拍3連を披露している。

とても勉強になる読み物

オーサカ=モノレールの中田亮さんが書かれたSWINGについての考察が勉強になるので興味のある人は読んだら良いと思う。絶対に読んだほうが良い。読まないなんてありえない。信じられない。
「SWINGについて」(その1) – SPECIAL | オーサカ=モノレール
パーカッション奏者の浜口茂外也さんが語るグルーヴの話も勉強になるので興味のある人は読んだら良いと思う。絶対に読んだほうが良い。読まないなんてありえない。信じられない。
浜口茂外也さんインタビュー Vol.2 – Guitar Labo – ヤフオク
ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアの三原重夫さんが語るドラマー向けのコラムも勉強になるので興味のある人は読んだら良いと思う。絶対に読んだほうが良い。読まないなんてありえない。信じられない。
三原重夫のビギナーズ・ドラム・レッスン > vol.8「難しいようで簡単な、でもやっぱり難しいリズムの構造」
3つ合わせて読むが吉。しかし音楽を聴取する感覚が変わってしまうのでコンサバな方にはオススメしない。なんてね、アハハハ。

 

Masamichi Torii